リレーエッセイNo.4「子どもたちの育つ社会 玉腰 暁子先生」

日本子ども健康科学会事務局でございます。平素より当学会にご高配賜りありがとうございます。

リレーエッセイ第4回目は北海道大学大学院 医学研究院公衆衛生学教室 教授 玉腰 暁子先生です。

ご存知のように子どもの数は減少しています。出生する子どもの数は、第二次ベビーブームの1973年の209万人をピークに年々減っていましたが、ここ数年新たな局面に入ったかのようで、2022年は77万人、さらに2023年は速報値(2024.2.27)で75.8万人となっています。ちなみに、1960年は160万人、1980年は157万人、2000年は119万人です。すごく単純化すると、以前は近所の仲間とラグビー(15人)を楽しめていたのが、サッカー(11人)になり、さらに野球(9人)は難しいのでハンドボール(7人)にしておくか、という感じでしょうか。

一方で、科学技術の発展は目覚ましく、対面でなくても様々な形でコミュニケーションをとることができるようになっています。オンラインの会議や学会、さらにはSNSでいろいろな人とつながることができる世の中は、ある意味とても便利です。買い物もボタンをクリックするだけで簡単に、洋服から食べものまで、届けてもらうことが可能なので、望めば、何日も他人と会わずに生活することもできそうです。生まれたときからインターネットやデジタル機器がある環境で育つデジタルネイティブな子どもたちから見れば、私のようにスマホの機能も十分に使いこなせない大人は理解できない存在かもしれません。

しかし、人がその発達段階で他者と触れ合い、一緒に喜んだり悲しんだりする一方で、自分とは違う考え方や育ち方があることを知り、他人の心や身体の痛みを思いやれることは、とても重要なことに思えます。接することができる仲間の数が否応なしに減ってしまっている現代社会で、直接人と関わらなくても生活できてしまうことを覚えるのは少し先に延ばして、自分を大事にしながら他者も大事にすること、それが自然に学んでいける環境をどの子どもも享受できるような社会になればと願っています。

北海道大学大学院 医学研究院公衆衛生学教室 教授 玉腰 暁子

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