リレーエッセイNo.3「子ども達に夢を届けられるのは誰だ?青木真智子先生」

日本子ども健康科学会事務局でございます。

第3回のリレーエッセイは福岡市の「青木内科循環器科小児科クリニック」 副院長の青木真智子先生です。

2024年初頭、能登半島沖に大震災が起こりました。コロナ禍のあと、世界各地での戦火の報道が続いています。沢山の災害や争いの報道が、毎日のテレビの画面を占めています。このような時代だからこそ、大人は子ども達に夢を与え、人間が信じるに足りるものだということを示さなければならないと感じています。

 子ども健康科学会の先生方は、熱いハートをお持ちだと、新参者の私にもそう感じさせる何かがあります。昨年の子ども健康科学会学術集会で、過去の大会長によるご講演を拝聴する機会がありました。先生方のご講演は本当に素晴らしく、心を奮い立たせる気持ちになりました。大矢理事長の「熱い人がたった一人でもいれば、地域を変える仕事をできることがある」というお言葉に、本当に心が動かされました。皆が同じ思いで動けば、立ち込めていた暗雲の隙間から、輝かしい光が差し込むことがあるでしょう。

 ある先生からお聞きした仏教の教えにある「おうむの話」を思いだしました。ヒマラヤ山のふもとの竹やぶに住んでいたおうむのところに、にわかに大火事が起こり、鳥も獣も逃げ場を失って鳴き叫んでいました。おうむは、長い間住居を与えてくれた竹やぶの恩に報いるために、大勢の鳥や獣を救うために、池に入っては翼を水に浸し、空に駆け上っては、滴を燃えさかる火の上に注ぎかけていました。その心は天界の雨を司る神を感動させ、大雨が降って大火事は消し止められました。その時のおうむの言葉が素晴らしいのです。

 「恩を思う心と慈悲の心からしていることが、できないはずはない。わたしはどうしてもやる。次の生に及んでもやりとおす」 同じ様な話は、南米の先住者の間でも「ハチドリの話」として伝わっています。これらの話は、真心から出た行動を続けることの尊さを、時空を超えて私たちに語りかけています。

 増え続ける虐待・貧困・いじめ、不登校・・。どれをとっても難しい課題ばかりです。しかし、こどもと関わる全ての大人たちが、心を込めて子ども達と向かいあい、励ましの言葉をかけ続けることは大きな力を生むと感じています。

 一かかりつけ医であり、還暦を過ぎた私ですが、診療の際にみせる子ども達の反応は毎日飽きることなく、何かの感動を与えてくれます。つい先日まで泣きじゃくっていた子どもが、

今日は誇らしげに診察に応じたり、重症の喘息だった子どもが成人となり、人の役に立つために消防士になるという報告をしに来てくれたり、また長い間不登校だった子どもが素敵なメッセージをくれたり、子ども達を励ましながら子どもと関わる私達自身がエネルギーをもらっていることは、間違いありません。

 また私は、幼小児生活習慣病健診とメンタルヘルス健診の両立を幼稚園・保育園・学校健診を巻き込みながら行うこと、専門の行政機関を擁立することを夢みています。私の願いの声が天に届きますように。

 エッセイなので、長いこと思っていることを書きました。今度のオンラインセミナーでは行動分析のスペシャリストである奥田先生による不登校の予防のためのご講演です。学術集会でもたくさんの素晴らしい企画が待ち受けているように感じます。

 皆様の日本子ども健康科学会へのご参加を心よりお待ちしております。

青木内科循環器科小児科クリニック 副院長 青木真智子(小児科医)

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