リレーエッセイNo.1「子ども達の幸せを目指すために 小石誠二先生」

日本子ども健康科学会事務局でございます。平素より当学会にご高配を賜り感謝申し上げます。

リレーエッセイ?と思われた方もいらっしゃることでしょう。このページは、日本子ども健康科学会の会員の皆様に、当学会の趣旨に沿った内容で日々感じていることをリレー形式で綴っていただき、子ども達の環境を考えていく一助になればという趣旨のもと、立ち上げました。

第1回目は、川崎こども心理ケアセンターかなで 医務課長 小石誠二先生です。

 第二次世界大戦後、施設養育の乳幼児に関する研究などからアタッチメント理論が構築される訳ですが、これに関しては栄養の問題も指摘されています。1956年に大阪市で行われた調査で、保護施設の子ども達は全国平均に比べて総エネルギーが15%、タンパク質が20%少なく、体重は10~20%軽いとのデータが有り、身長も5%低かったのですが、基礎代謝は保たれていました。これは筋肉量などを介して日常の身体活動性も反映します。成人後の慢性的な低栄養では体格は大きく変化せずに身体活動性が下がってしまうのに対して、子ども達は身体的成長を調整して栄養不足に適応できる訳ですが、これが長期的にどう影響するかは要検討です。

最近は遺伝子の発現調節といった概念も含むDOHaD(健康と病気の発生起源説)や、ACEs(小児期逆境体験)の量が将来の健康や寿命に及ぼす影響などが良く話題になり、児童福祉や子どものこころの診療領域でもアタッチメントとトラウマ、延いては子ども虐待の世代間伝達リスクなども強調されるなど、環境要因の長期的な影響に関心が向き、子ども時代に関わることの影響の大きさや責任を改めて痛感します。

目の前の子ども達の現時点と将来の、更には未来の子ども達の幸せを願う上で、今年度はこども基本法が施行され、子ども家庭庁が発足するなど、期待して見守るべき施策も有り、その背景に子どもの権利条約も有ります。社会が急速に変化する中で、子ども達に関わる私達が方向を見誤らずに前進するには、自分の専門領域だけに偏らず色々な領域からの知見や知恵を学び、かつ日々の気付きも発信して議論して行くことが役立つと考えます。

本学会を多数の方が積極的に活用して下さることを期待しております。

川崎こども心理ケアセンターかなで 医務課長

(社会福祉法人横浜博萌会かなで診療所 管理者)

小石誠二(小児科医 精神科医)

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