リレーエッセイNo.24 「身体不調や不登校はメンタルのSOSサイン 古荘純一先生」
日本子ども健康科学会事務局でございます。
平素より、当学会の活動に格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
さて、リレーエッセイ第24回は、青山学院大学 教育人間科学部 教育学科 教授 古荘純一先生にご執筆いただきました。
身体不調や不登校はメンタルのSOSサイン
東京大学と東京都医学総合研究所の研究チームは、2年前に、引きこもり症状の持続や身体不調の増加が思春期児童が死にたいと思ってしまうリスクになることを見いだしたと報告しています。小児科医の先生方はどなたでも、不定愁訴の子どもや不登校状態の子どもの診察・相談経験がおありだと思います。医師に限らず本学会の会員の皆さまは、「健康」の反対概念でもある「身体不調」や「ひきこもり」の予防や早期対応に努める立場と考えています。ちなみに不定愁訴とは、一般的な検査を行っても、身体的な病気の所見がないにもかかわらず、様々な部位の痛み、疲労、めまい、吐き気、息苦しさなどを呈する状態のことで、不登校は病気や経済的理由以外で学校にいけない状態像で、いずれも子ども期に使用される表現ですが、成人も含めた「身体不調」や「ひきこもり」と極めて類似性の高い概念といえます。
記事によると、それぞれの様子がない子どもに比較して、ひきこもりは2.4倍、身体不調は3倍自殺念慮が高くなるとされ、身体不調は周囲がみつけやすいため自殺予防の支援につながる可能性がある、とされています。
私の臨床経験として、不定愁訴や不登校状態が長引く子どもは思春期から青年期にかけて、抑うつや不安症などを発症しやすい印象があり、またそれを支持する論文も報告されていますので、私の外来では、QOLや抑うつの尺度を用いた健康度の評価も行ってきました。ただし私の外来は紹介が基本ですので、これらの症状が「こじれた」子どもが対象です。
他方、私たちが以前に発表した論文(松嵜ら『日本における「中学生版QOL尺度」の検討』日本小児科学会雑誌 2007年)で、抑うつ度が高ければQOLが確実に低くなるという結果を報告したものです。
その際、副次的に、中学生の約5%が「生きているのがいやだといつも感じる」と答えていることがわかりました。この研究はQOL研究の質問である「頭が痛い」、「お腹が痛い」という身体不調の質問と抑うつ別尺度で、「生きているのがいやだと思う」2つの尺度を比較したものですが、この報道からふりかえると、身体不調項目と自殺念慮の項目を抽出すれば、それらの相関も比較可能であったと考えられます。端的にいえば、研究報告にとどまりその後の社会啓発につながっていなかったと言えるでしょう。
思春期のメンタルヘルスは重要なのに医療の狭間の時期です。本学会の課題の一つとしてその改善に努めるべきと考えています。会員の皆様のお力添えをえて、社会啓発をすすめて、子どもたちの支援につなげることがこれからの課題といえるでしょう。
青山学院大学 教育人間科学部 教育学科 教授 古荘 純一

