リレーエッセイNo.14  「子どもと家族にやさしい社会の実現を願って-フィンランドに学ぶ- 浅野みどり先生」

日本子ども健康科学会事務局でございます。平素より当学会にご高配を賜りありがとうございます。

リレーエッセイ第14回目は、修文大学看護学部教授・名古屋大学博士課程教育推進機構本部長 浅野 みどり先生です。

 ここ数年の日本における出生数の減少は予測をはるかに超えています。今年2/27に厚生労働省から発表された2024年の国内の出生数(速報値)は、もちろん過去最少の72万988人で前年より4万人弱(5%)減少しています。速報値には国内で生まれた外国人の子どもを含んでいるため、日本人のみの出生数(6月に発表される)はなんと70万人を割り込む可能性が高いとのことです。私が学生の頃には出生数は150万人前後でしたので、当時の半分以下ということになります。

 少子化対策の一つとして、2024年育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正により、今年4月から段階的に子どもの看護休暇の見直し、所定外労働の制限の対象拡大(3歳未満から小学校就学前に)、テレワーク導入の努力義務化などが始まります。また、2025年4月1日から現行の育児休業給付金制度が大幅に拡充され、給付率の引き上げにより育児休業を取得する際の経済的な負担が軽減され、より多くの家庭が安心して育児に専念できる環境が整い、特に、共働き家庭での育児休業取得を促進し、男女ともに育児に参加しやすい仕組みが強化されると期待されています。孫をもつ身としても、“本当に子育て世代に優しい社会が実現する”ことを願ってやみません…が、そう簡単ではないようにも思います。

 私事ではありますが、ネウボラで有名な“子どもと家族にやさしいフィンランド”の家族包括支援の視察の機会があり、2日前に帰国したところです。その興奮冷めやらぬ今、日本との違いをまざまざと感じたことを書いておこうと思います。

 母親も父親もほぼ平等に家事や育児を担うことが“あたりまえ”と認識されている=浸透していることが実感されました。最近は日本でも乳幼児の父親たちは、ひとりで乳児を抱いて買い物や散歩、保育園の送迎をしている姿をよく見かけるようになりましたが、育児手当が保障され安心して仕事を離れて育児・家事に専念できる時間が長期間担保されている点は大きく異なります。生後2歳未満の子ども一人につき、父親・母親共に160日(営業日=土日を除いた月~金の160日)、両親で320日(営業日)の育児休業ができ、このうち最大63日(営業日)まではパートナーに譲ることができます。例えば、父親が97日の育児休業を、母親が223日の育児休業を取ることもできます。また取得の仕方にも柔軟性があり、個別の日や短期間ずつに分けて取得することも可能だそうです。因みに、働いている父親の帰宅時間は16時30分頃だそうです。

 また、乳幼児のための無料の市営子育て広場、保育園の開放日、地域の遊び活動センターなど多様な親子の居場所があり、図書館内にネウボラ(保健師)が常駐する健康センターが併設されアクセスしやすいなど、まさに包括的な育児支援が実践されていると感じます。ただ、ネウボラは妊娠期からのつなぐ役割が主で障がいや虐待などの問題を抱えている家族はソーシャルワーカー(修士)が担当となりネットワークで支援する体制のようです。一人で抱え込むのではなくネットワークで支えることは大事な点だと思います。日本も一日でも早く、だれもが安心して子育てできる社会になることを願って、もう少しがんばろうと思います!

修文大学看護学部教授・名古屋大学博士課程教育推進機構本部長 浅野 みどり

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