リレーエッセイNo.10 「よく生まれ、よく育まれ、、、よく生きるために 甲斐鈴恵先生」

日本子ども健康科学会事務局でございます。平素より当学会にご高配賜りありがとうございます。

リレーエッセイ第10回目は、宮崎県立看護大学 小児看護学准教授 甲斐鈴恵先生です。

 小児看護学教員として、日々、学生と関わり、また、おもちゃコンサルタント・マスターやメディア安全指導員の資格を活かして、子育て支援活動に携わっています。
 その活動の中で、ナイチンゲールの「よく生まれ、よく育まれ、よく働かせるようにつくられている」という言葉が脳裏に浮かびます。薄井はこれらについて、以下のように補足しています。【生まれる】について、「変化する自然界への適応能力を高めていくためには、親と同じでありながら同じでない個体を生み出していくことが必要で、受精が行われても必ず着床に至るとは限らず、妊娠と気づかれずに、早期に吸収されてしまうものが多いと考えられている」とあり、この世に生まれてくることそのものが、奇跡であり、素晴らしいこと。【育まれる】について、誕生から1歳までは、全ての欲求が満たされるように整えることで情緒が細やかに分化し、1歳からは2歳は、児の情緒が不安定にならないように留意しながら、周りのことに向けた知的関心が満足するように育むこと、そうすると自分の意思で動きたくなり、行動する力と押さえる力のバランスが3歳くらいまでに育つ、そして、4歳では、「自分と相手の立場を理解する」能力が身につくことから、この4歳までを丁寧に築くことによって、その先の人生を健康に生きていく土台ができる、この過程を、丁寧に育むことがとても大事であること。【よく働かせる】とは、体と心、ともにもてる力を十分に発揮できるように、とくに、「脳を<よく働かせる>とは、リンゴを見たときに、「リンゴ、赤い」等の現象を正しく反映した像を脳に描き、同時に、「おいしそう、きれい」と豊かな感情がひろがり、さらに、「リンゴの栄養価は」等その現象の意味を察し、さらに「今年の収穫は?」「豊作だった」とか、「台風の影響で被害が大きかったのでは」等他人の生活についても想像力を働かせ、立場の変換を行う状態であること。
 文部科学省が定めている【生きる力】の育みは、【よく生まれる】【よく育まれる】【よく働かせる】ことが継続されることと考えています。そのためには、人間そのものへの強い関心、環境に働きかける看護、健康を守る看護等が、いずれも重要であり欠かせません。近年は、スマートフォンやタブレット機器の発達により、様々なアプリケーションが開発され、子育てに活用しやすくなっています。子育て支援の情報を集め、予防接種管理等を行い、子育て世代の親の負担軽減やうつ防止に役立っている一面があります。一方、子どもの五感を育む体験が不足することや健康被害が懸念されています。子ども達の「生きる力」が十分に育まれ、親自身も温かく育まれ、時代や環境に適応しつつ、よいものを温存しながら、親子がこの社会を心身共に健康的に生き抜くことができるように願っています。これからもこの学会を通して多くのことを学びたいと思っています。

以下に、おすすめの図書・言葉をお知らせします。
「育てたように子は育つ」(著:佐々木正美、書:相田みつを)
「子どもの育ちを支える」(著:花野典子)
「星の王子さま」(サン=テグジュペリ)の名言:おとなだって、はじめはみんな子どもだったのだから。(著者まえがき)

宮崎県立看護大学 小児看護学 准教授 甲斐鈴恵

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