リレーエッセイNo.9 「医療と保育 ~ライフワークとして 鹿島房子先生」
日本子ども健康科学会事務局でございます。平素より当学会にご高配賜りありがとうございます。
リレーエッセイ第9回目は、聖徳大学短期大学部保育科 准教授 鹿島房子先生です。
医療と保育 ~ライフワークとして
●医療と保育の世界を歩んできて
21歳の時に保育の世界に足を踏み入れて半世紀余りがたちました。保育園や医療の支援が必要な子どもたちに関わる「病院」での保育士を経て、今は保育者養成校で働かせていただいています。幼児教育が色濃くアピールされる中、保育士の「福祉」の側面を大事にしたい私は、日々学生さんと向き合う中で、あつく語ってしまうことがあります。そもそも自分は、1971年に制作された柳沢寿男監督の福祉ドキュメンタリー映画、「ぼくのなかの夜と朝」を観たことをきっかけに、難病の子どもたちに関わる仕事に興味を持ち、保育の道に進んできたのですから。。気が付けば高齢者と言われる域に入り、今もなお、難病や障がいを持つ子どもやご家族の支援に携わりたいという若き保育者の育成に微力ながら携わっていられるということは、感謝でしかありません。
●時代と共に変化する保育士の役割とは
私が医療機関の保育士になった昭和の時代は、まだ難病の子どもたちが入院して長期療養をすることが当たり前の時代でした。家族と離れて暮らす子どもたちの生活に寄り添い、日常生活支援の中で遊びや生活を支えることが重要な仕事でした。今はどうでしょう。長期入院をする子どもたちは当時に比べとても減りました。世の中では「地域共生」が謳われ、ハンディキャップがあっても地域で暮らしていけるようにすることが、今わが国で目指している姿です。そのようなことが今は背景にあるからこそ、保育者の役割も、より彼らが地域で豊かに暮らせていけるような支援につないでいかなくてはいけない、そういう時代なのだと思います。
●こどもまんなか実行計画が進められる中で
本学会では子どもの健やかな育ちを保障していくために、職種を超えて様々な専門職の方で構成され、学び合う場となって老いるのだと思います。今、我が国では子ども基本法、こども大綱を土台として、こどもまんなか実行計画が進められています。健康な子どもだけでなく、医療の支援が必要な子ども、障がいのある子どもなど、全ての子どもが抜け落ちることなくその対象となっているはずです。保育士という職種も支援者の中に占める大切な職種に育っていってほしいと願ってやみません。
聖徳大学短期大学部保育科 准教授 鹿島房子